「あなたの命は6,000円より安かったのですか?」
2023年4月1日に施行された改正道路交通法により、全ての自転車利用者へのヘルメット着用が努力義務化されました。※それ以前は、13歳未満の子供が自転車に乗車する場合に、ヘルメットを着用させる努力義務が保護者へ課されていました。
年齢に関係なく自転車に乗車する際にヘルメット着用が努力義務化された背景には、自転車関連事故の増加だけでなく、頭部の致命傷による死亡者が増えているからです。
自転車による死亡事故の半分以上が頭部損傷
警察庁によると、自転車乗車中の交通事故による死者の約54%が、「頭部損傷」によるものとなっています。また、ヘルメットを着用していない場合は、着用している場合と比べて「致死率」(死傷者数に占める死者数の割合)が約1.9倍高くなっています。
一般社団法人 日本自動車連盟(JAF)は、ヘルメット着用あり・なしが転倒時に頭部へ与える衝撃を検証したテスト結果を「自転車同士の出会い頭衝突」というYouTube動画で公開していますが、速度が低めの自転車同士の衝突や停止時の転倒でさえ、頭部が地面に叩きつけられる際の衝撃は大きく、ヘルメットを着用していない場合、致命傷になる可能性が高いと警笛を鳴らしています。
ヘルメット着用率全国1位は愛媛県
警察庁が2023年7月に実施した自転車ヘルメット着用率全国平均は13.5%で、1位が愛媛県の59.9%、沖縄県は27位の8.5%、最も低かったのは新潟県の2.4%でした。着用率の都道府県格差が顕著となっています。
愛媛県今治市と広島県尾道市の間には「しまなみ海道」という片道約70㎞のサイクリングロードがあります。瀬戸内海の島々の風景を楽しみながらサイクリングができる場所として国内外で知られている場所です。自転車文化を推奨する愛媛県だからヘルメット着用率も全国1位ということもありますが、それだけではないようです。
ヘルメット普及の背景には、2014年に学校から自転車で帰宅途中に横断歩道を渡っていた当時高校1年生だった息子さんが、トラックとの交通事故で頭を強打し亡くされた父親の存在がありました。交通事故によって愛する家族を失う悲しみを二度と生み出してはならない、という悲痛な想いが行政を動かし、事故翌年には県立高校生が自転車乗車の際のヘルメット着用の義務化につながりました。今回のタイトルの問いかけは、父親の切なる想いを現した言葉です。
沖縄県内にヘルメット購入補助金制度はあるの?
現在、沖縄県において自転車用ヘルメット購入補助金を提供している自治体は那覇市と石垣市の2市があります。これらの市補助金制度についての詳細は各ホームページに掲載されています(下記参照)。また、その他の市町村でも補助金が提供される可能性もありますので、お住いの自治体のホームページや広報誌などを適宜ご確認ください。
自転車用ヘルメットの購入補助金(上限1,000円)について|那覇市公式ホームページ (city.naha.okinawa.jp)
自転車乗車用ヘルメットの購入費用の一部を補助します!!/石垣市 (city.ishigaki.okinawa.jp)
まとめ
ヘルメット着用は努力義務なので、かぶらなくても罰則はありません。しかし、自転車交通事故に限らず、単独走行中に道路上でのスリップや縁石など障害物などにぶつかり転倒し頭部を強打する可能性も十分あります。ヘルメットを着用していれば、地面にたたきつけられる際の衝撃をそのヘルメットが先に受けてくれ、頭部の損傷リスクを低減することにつながるでしょう。ヘルメット購入補助金制度の有無にかかわらず、乗るならヘルメットをあらかじめ購入・着用されることを切望します。
夏休みに入り保護者が子供に自転車の乗り方を教えたり、一緒に乗ったりする機会も増えます。大人が率先してヘルメット着用の模範を見せれば子供も自然とかぶる意識が芽生えるでしょう。子供は大人の背中を見て育ちます。
「命どぅ宝(ぬちどぅたから)」。ヘルメットを着用していれば助かった命、しないで自分の人生が続くか終わるかは私たち次第ともいえます。
参考文献リスト
JAF Mate Online 自転車に乗るなら大人でもヘルメットを 2023年4月から着用が努力義務に
警察庁 「頭部の保護が重要です ~自転車用ヘルメットと頭部保護帽~」 「自転車乗車用ヘルメット着用率調査結果 2023年7月」
NHK NEWS WEB 自転車用ヘルメットの着用が努力義務化 あなたはどうする?
しまなみジャパンHP
那覇市役所HP 自転車用ヘルメットの購入補助金(上限1,000円)について
石垣市役所HP 自転車乗車用ヘルメットの購入費用の一部を補助します!!
リスクマネジメント・アドバイザー 宮城 和美