命どぅ宝(ぬちどぅたから)
9月1日が防災の日となったのは、1960年6月11日の閣議決定でした。その後、1982年5月の閣議了解で毎年9月1日の防災の日を含む1週間を防災週間として創設し、さらに翌年の1983年5月の内閣府の中央防災会議において、9月1日の防災の日を中心に現在の8月30日から9月5日の一週間の日程で防災週間と定めました。 また、自治体によっては9月を「防災月間」と定めて、防災訓練や防災啓蒙活動に取り組んでいる例もあります。
「天災は忘れた頃にやってくる」という名言があります。自然災害は、その被害を忘れた頃に再び起きるものなので、起きてしまった災害を忘れることなく日々の備えをすべきという教訓です。防災の日を前に、今一度災害への備えについて考えてみましょう。
「防災の日」の由来
防災の日が9月1日になった由来は3つあります。
① 9月1日は関東大震災が起きた日。この歴史に残る震災の教訓を忘れてはならない。
② 9月1日前後は暦の上では立春から数えて二百十日。この頃は、稲など穀物が実り始める時期とともに、農作物に甚大な影響を及ぼす台風が多い時期。昔から農家にとって厄日とされている。
③ 1959年9月26日の伊勢湾台風は、戦後最大の台風災害(全半壊・流失家屋15万3,893戸、浸水家屋36万3,611戸、死者4,700人、行方不明者401人、負傷者3万8,917人)をもたらした。この災害は地震や津波以外の災害では最多の犠牲者を出した災害史上特筆される台風となり、風水害に対する心の準備や覚悟を促す防災の日制定の後押しとなった。なお、その二年後の災害対策基本法の制定の契機となったことも忘れてはならない。
日本は世界有数の災害大国
災害は大きく3つに分類されます:①自然災害(例:地震や津波、台風)②人的災害(例:火災や爆発、列車事故)③特殊災害(例:テロ攻撃)。共通点はどれも人命や社会生活に多大な被害や影響を及ぼすことです。
特に日本は、地震や津波、火山噴火、台風、大雨が発生しやすく、人命や生活に大きな影響を及ぼす自然災害が多発する世界有数の災害大国です。地震や津波に絞っても、今年元日の能登半島地震、4月の台湾東部沖地震、そして8月8日午後4時43分ごろ宮崎県の日向灘沖地震とこれらの海底地震に伴う津波が発生しました。日向灘での震源地は、南海トラフ巨大地震の想定区域内深さ30キロでマグニチュード(M)7.1と推定されました。これにより気象庁は、同日午後7時15分から8月15日午後5時までの1週間程度「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を初めて発表し、全国に注意を呼びかけました。
南海トラフ巨大地震が沖縄に及ぼす影響
「南海トラフ地震臨時情報」の発表により、総務省消防庁は南海トラフ地震防災対策推進地域に指定されている沖縄県を含む29都府県707市町村に避難態勢の準備などを住民に呼びかける通知を当該都府県に出しました。沖縄県内での指定地域は次の16市町村となっています。
名護市、糸満市、豊見城市、うるま市、宮古島市、南城市、国頭村、東村、与那原町、渡嘉敷村、座間味村、南大東村、北大東村、伊平屋村、八重瀬町、多良間村
沖縄気象台は8日夜に記者会見を開き、内閣府が想定する最大規模のM9.1 (参考:東日本大震災はM9.0)の地震が想定震源域 (右図の赤色領域)で発生した場合は、3メートル以上の津波が到達する可能性があると予想さています。また、想定震源域内で沖縄に近い西端で発生した場合には、沖縄本島北部に約1時間弱で到達する速さと想定されています。よって、南海トラフ巨大地震が沖縄に及ぼす影響は決して看過できることではありません。
まとめ
過去1400年間に南海トラフでは約100~200年間隔で大地震が発生しており、1944年の昭和東南海地震、1946年の昭和南海地震発生から80年近くが経過しています。政府地震調査研究推進本部の報告書によれば、M8~9クラスの南海トラフ巨大地震が起きる確率は今後30年以内に70~80%とされており、南海トラフ沿いで同等の大規模地震がいつ発生してもおかしくない状況下であることを認識しなければなりません。
今年4月の台湾東部沖地震で津波警報が県内で発令された際に、避難経路における交通渋滞の発生をはじめ様々な課題が浮き彫りになったことはまだ記憶に新しいことです。能登半島地震では、道路の寸断などで救援や物資の輸送が滞り陸の孤島化となりました。周囲を海に囲まれた沖縄県で災害が起きた場合、幹線道路の寸断、空港や港も閉鎖され、インフラもままならぬ状態に陥ればどうなるでしょうか。能登半島は陸の孤島化となりましたが、沖縄県は本当の意味で孤島化してしまいます。
防災の日を迎えるにあたり、個人として、家族として、また地域や職場で改めて避難経路・場所、安否、備蓄品の確認など日頃から命を守る考動ができるよう準備をする機会にしてはどうでしょうか。
~ 備えあれば患いなし。命どぅ宝。~
参考文献リスト
内閣府防災情報ページ 「防災週間の期間について」 「第1章 伊勢湾台風災害の概要」
東京消防庁 消防雑学辞典 「防災の日と二百十日」
気象庁HP 「台風位置表2020年」 「南海トラフ地震防災対策推進地域」
沖縄タイムス+プラスニュース 「台風9号、沖縄で暴風が32時間続いた理由」 2020年9月3日
NHK NEWS WEB 内閣府 気象庁が会見 「日ごろの地震への備えを続けて」 2024年8月15日
政府 地震調査研究推進本部 「南海トラフで発生する地震」
沖縄県HP 宮崎県日向灘を深淵とする地震及び南海トラフ自身臨時情報の発表について 知事コメント
NHK沖縄NEWS WEB 「気象台 県内でも津波への備えを改めて確認するよう呼びかけ」 2024年8月9日
リスクマネジメント・アドバイザー 宮城 和美