災害時に役立つ公的支援制度について②
北海道を除く日本列島では、毎年5月から7月にかけ南からおおよそ40日前後の梅雨の時期を迎えます。
今年の沖縄の梅雨入りは5月21日ごろで、梅雨明けは6月20日ごろでした。通常、沖縄の梅雨は5月10日から慰霊の日前の6月21日の平年42日間ですが、今年は平年に比べ11日遅い梅雨入りで、梅雨明けは平年より1日早く30日間の短い期間となりました。
しかしながら、梅雨入り早々、宮古島では降り始めから72時間の降水量が記録的となり、また本島各地でも道路の冠水、土砂崩れなど相次ぎました。梅雨の中休みもありましたが、梅雨末期の6月14日には那覇市で1時間に94.5ミリの大雨が降り、100年前の観測記録を塗り替える6月の観測史上最多の降水量を記録しました。また、梅雨期間中は昼夜を問わず携帯電話から警報や避難指示を知らせるアラームが止まないという印象が強いシーズンとなりました。梅雨が明けると同時に連日猛暑の日々が続き、これから大雨と強風のダブル脅威を携えた台風も沖縄にやってきます。
今回のありんくりんニュースは、もし自然災害等で被災した場合に住宅再建や生活基盤を立て直すために活用できる国や自治体からの「公的支援制度(令和6年度版)」についてご紹介します。
災害救助法の適用状況
自然災害により、一定数以上の住家の滅失が発生した市町村には、都道府県が実施主体となって、「災害救助法」 が適用され、さまざまな救助の提供が可能になります。内閣府の資料によると、平成30年度からの直近6年間に危機とされる自然災害が多発していることがわかります。「災害救助法の概要」と「災害救助法が適用された市区町村数(全国)」については次ページ資料をご覧ください。
災害救助法の適用は過去に沖縄県でも
直近では、令和5年度に台風6号による広範囲停電被害が災害救助法の適用を受けています。沖縄本島を中心に34市町村が対象となり、県内全41市町村の約83%を占める割合となりました。この災害救助法の適用は、平成27年9月に与那国島で全壊家屋10戸を含む322戸の住宅被害をもたらした台風21号以来となりました。市町村数では、復帰前(琉球政府時代)の昭和36年10月の台風ティルダによる災害で那覇市を含む46市町村に次ぐ多さで、復帰後最多となっています。
また、沖縄県における過去の災害救助法適用状況をさかのぼると、昭和35年から令和5年度までの63年間に適用された件数は、自然災害と重大事故を合わせ計27件に及び、うち、約78%に当たる21件が台風災害によるものでした。
URL : https://www3.archives.pref.okinawa.jp/RDA/kankou/G00022428B/index.html
被災者支援を受けるには申請が必要です
自然災害で被災すると、仕事や日常生活にさまざまな影響が及びます。また、住宅再建や生活基盤を立て直すためにはまとまったお金が必要になり、その資金を自力で賄い暮らしを元の状態に戻すことは大変なことです。被災し健康や生活基盤が損なわれるような被害にあった場合は、被災者が受けられる公的な支援制度があることを知っておくと、いざという時に役立ちます。
支援を受けるには、基本的に自分で申請することが必要です。大規模災害になると、被災者世帯数も何万、何十万以上となる可能性があります。一般的に、支援申請は受付順番で処理されていくようですので、申請に必要な書類等を早めに準備・提出することが早めに各種支援を受けられることにつながります。被災したからといって、自動的に支援を受けることができるわけではないので、受け身ではなく支援内容や必要な申請手続きなどの情報を積極的に入手しておくことが肝要です。情報収集の例として次の2つをご紹介します。
支援制度の中に「災害復興住宅支援」があります。沖縄県での問合せ先は沖縄振興開発金融公庫となっています。
令和6年度の支援内容は昨年度と比較し、建設、購入、補修に関する融資限度額が大幅に引き上げられたのが大きな特徴です。沖縄振興開発金融公庫の災害復興住宅資金のホームページを閲覧し、支援対象、申込受付期間などの情報から確認できます。 https://www.okinawakouko.go.jp/service/purpose/p008/1676705945/
もう一つの例は、「被災者生活再建支援制度」です。お問合せ先は、都道府県、市町村になっています。沖縄県ホームページでは、制度について「国が(公益)都道府県センターを被災者生活再建支援法人として指定。都道府県より支給事務の委託を受け、支援金の支給及び却下の決定、支援金の支給等の業務を行う。」 と説明しています。更に調べていくと、この公益財団法人都道府県センターのサイトで「支援金支給概要」をクリックすると申請の流れなどを説明した情報を入手することができます。
被災者生活再建支援事業:支援金支給概要|都道府県センター (tkai.jp)
罹災証明書と写真
災害支援を受けるにあたって、ほとんどの場合に必要と言われているのが罹災(りさい)証明書です。この証明書は、市区町村が住宅の被害状況の現地調査を行い、被害程度を証明するもので、各種被災者支援策※を受けるための要件になっているケースが多いため、支援を受ける第一歩となる書類として位置づけられています。また、罹災証明書は税金の減免や隔週融資などの様々な申請に必要となる書類です。
罹災証明書に記載される住宅の被害程度は、損害規模の大きな順に「全壊」 「大規模半壊」 「中規模半壊」 「半壊」 「準半壊」 「準半壊に至らない(一部損壊)」 の6区分です(下記の表参照)。
災害規模が大きいほど、罹災証明書を発行するための実態調査に時間がかかる可能性があります。可能であれば、瓦礫など撤去作業などを行う前に被害状況がわかる写真(住宅の全景がわかる4方向のものと被害箇所等)をスマホなどで違う方向から複数枚撮っておくと証拠保全として役立ちます。住宅が浸水した場合、水かさがどの位置まで押し寄せてきたかがわかるように、ものさしやメジャー、その他測定できるものを壁などにあてながら撮影することを推奨します。写真や音声付きのビデオは、罹災証明書だけでなく保険請求の際にも活用できます。
公的支援制度(個人向け 抜粋)
ここでは、個人向けの主な公的支援制度についていくつかご紹介します。 また、添付の「災害時に役立つ公的支援制度」のチラシに下記の支援制度を含む主な制度を掲載していますのでご参照ください。
まとめ
公的支援制度は、被災後に住宅再建や生活基盤を立て直すために活用できる、国や自治体が整備している公共の仕組みです。事前に制度を知っていれば活用することができ、経済的負担軽減につながります。しかし、その存在を知らなければ支援を受けられるのが遅れる、受けられないケースも想定されます。被災者となれば、精神的にも金銭的にも想像以上のストレスに直面するといわれています。公的支援制度について少しでも知っておくことは、 1日も早い復興につながる生活再建手段として活用できるのではないでしょうか。
災害時に役立つ公的支援制度チラシ(個人向け)2024-6-1版
災害時に役立つ公的支援制度チラシ(中小企業・自営業者向け)2024-6-1版
災害時の「住まい」と「生活」の再建に向けてリーフレット(令和5年7月作成)
被災者支援に関する各種制度の概要(内閣府 令和6年6月1日現在)
参考文献リスト
日本気象協会tenki.jp いつもと違う今年の梅雨 警報級大雨と猛暑が隣り合わせ いつまで警戒?梅雨明けは? 2024年6月28日
気象庁 令和6年の梅雨入りと梅雨明け(速報値)
内閣府政策統括官(防災担当) 「災害救助法の概要(令和5年度、令和6年度)」,『災害時の「住まい」と「生活」の再建に向けて』リーフレット(令和5年7月作成)
内閣府防災情報のページ 「これまでの災害救助法の適用状況」、「罹災証明書」
沖縄県公文書館所蔵資料 琉球のあゆみ 通巻15号(第3巻2号) 1960年2月 「災害救助法はこうして立法化された」
沖縄県子ども生活福祉部消費・くらし安全課 沖縄県災害救助法の適用状況一覧表
琉球新報デジタル 【台風6号】沖縄県、災害救助法の適用、34市町村に 県内自治体の8割超が対象 2023年8月5日
沖縄振興開発金融公庫 災害復興住宅資金のご案内
公益財団法人都道府県センター 「被災者生活再建支援事業」
沖縄県HP 「被災者生活再建支援制度について」 「災害時被災者支援関係の情報」
独立行政法人国民生活センター 国民生活ウェブマガジン 「被災直後に利用できる公的支援制度」
リスクマネジメント・アドバイザー 宮城 和美