コラム

2025.09.05

“救命のリレー” あなたのその一歩が命をつなぐバトン

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ありんくりんニュース

今年4月、一人の男性の尊い命があわや失われる可能性がありました。
宜野湾市の路上を通りかかった男女が泡を吹いて倒れていた心肺停止状態の男性を発見し、救急車が到着するまでの間、救急隊の指示を受けながら心臓マッサージを続け、その甲斐あって男性は一命をとりとめました。
後日二人には警察署から感謝状が贈られ、女性は「職場で救急救命の講習を受けて命が一番だからって、一緒に力を合わせて心臓マッサージをすぐに行いました。」と語っていましたが、皆さんはこのような場面に遭遇した際、同じ行動がとれるでしょうか?
毎年9月9日は「救急の日」です。前述の事例のように、目の前で意識不明の人が倒れている場に遭遇する可能性は十分ありえます。今回のミニは、救急救命の重要性と私たちができることについて考えてみたいと思います。

応急手当と命が助かる可能性
突然心臓が止まり、日本で亡くなっている人の数は1年間に約9万人と言われています。2023年中の救急車による現場到着所要時間(119番通報を受けてから現場に到着するまでに要した時間)の全国平均は約10.0分で、これは新型コロナウィルス感染症発生前の2018年の8.7分と比べ約1.3分延伸しています。沖縄県が今年1月に公表した令和5年版消防防災年報によると、2022年中の平均所要時間は9.4分で同年の全国平均(10.3分)と比べ低いものの、毎年延伸傾向で推移しています。
下図の「応急手当と救命曲線」は、時間が経過するごとに命が助かる可能性(以後、救命率)は低下していることを示しています。その場に居合わせた人が救命処置(一時救命処置)※をした場合の救命率は、救急車が到着するまでの間何もしなかった場合に比べて曲線の低下が緩やかに(救命率が高く)なっています。
※救命処置とは応急手当の一部で心臓や呼吸が止まってしまった場合の対応を指す。具体的な対応としては、心肺蘇生(胸を強く圧迫する「胸骨圧迫」と口から肺に息を吹き込む「人工呼吸」)とAED(Automated External Defibrillatorの略、日本語では自動体外式除細動器)の使用がある。

出典:(左)政府広報オンライン 「もしものときの救急車の利用法 どんな場合に、どう呼べばいいの? グラフ:救急自動車による救急出勤件数」と沖縄県令和5年版消防防災年報 「救急第07表 現場到着平均所要時間」をもとに、当社作成。
(右)政府広報オンライン 「応急手当の知識と技術。いざというときに備えて身につけておきましょう 応急手当と救命曲線表」

社会復帰のカギとなる「救命の連鎖」
沖縄県で救急車が到着するまでにかかる時間は平均9.4分、場合によってはそれ以上かかることもあります。心臓が止まると10秒ほどで意識がなくなり、その状態が3~4分以上継続すると脳は酸素不足によりダメージを受け始めます。時間が経過するごとに生存率は低下し、一刻一秒でも早い対応が重要となります。
ここでカギとなるのが、「救命の連鎖」(Chain of Survival)と呼ばれる命をつなぐ鎖のリレーです(図参照)。

出典:政府広報オンライン 「応急手当の知識と技術。いざというときに備えて身につけておきましょう」 を加工して作成

総務省が公表した「令和6年版救急・救助の現況」によると、2023年中28,354人が心肺停止状態となり、一般市民が心肺蘇生を実施した件数は16,927人(59.7%)で、実施しなかった件数(11,427人、40.3%)を上回りました。 特に、その場に居合わせた人が救急隊到着までの間に一次救命処置を実施すると、実施しなかった場合に比べて生存率や社会復帰率が高いということがデータで証明されています。

出典:総務省「令和6年版 救急・救助の現況 図12 一般市民が目撃した心原性心肺機能停止傷病者のうち、一般市民による心肺蘇生等実施の有無別生存率(令和5年)」をもとに当社作成

まとめ

毎年9月9日は「救急の日」です。この日を含む1週間は「救急医療週間」で、今年は9月7日(日)から13日(土)です。これを機に、地域の消防署や医療機関主催の講習会などに積極的に参加し救急救命についての知識を身につけてはいかがでしょうか。当社のアプリDAY-GO!なび(二次元コードまたは「DAY-GO!なび」で検索)では、那覇市消防局とのコラボにより応急手当の手順についての動画を掲載しています。救急隊が現場に到着するまでの間、心肺蘇生の実施やAEDの使い方を知っていれば、誰かの命を助けられる確率が高まります。自分自身が助けてもらう側になるかもしれません。もしものとき大切なバトンを渡せるように、準備運動(事前の備え)しませんか?

参考文献リスト
沖縄テレビ放送2025年6月17日 「心肺停止の男性を救助した2人に宜野湾署が感謝状贈呈 救急車が到着するまで心臓マッサージ」
一般財団法人 救急振興財団 改訂6版応急手当講習テキスト
日本AED財団 命を守る心肺蘇生AED2024
政府広報オンライン 応急手当の知識と技術。いざというときに備えて身につけておきましょう | 政府広報オンライン (gov-online.go.jp)
もしものときの救急車の利用法 どんな場合に、どう呼べばいいの? | 政府広報オンライン (gov-online.go.jp)
沖縄県令和5年版消防防災年報 「救急」 第07表 現場到着平均所要時間
総務省報道資料 「令和6年版 救急・救助の現況」

リスクマネジメント・アドバイザー  宮城 和美