コラム

2024.03.25

地震火災への備えは大丈夫ですか?

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ありんくりんニュース

今回のニュースでは、 「地震火災対策の推進」について考えてみたいと思います。

輪島市大規模火災の原因(速報)
今年元日の能登半島地震直後に石川県輪島市河井町地内(輪島朝市)で発生した大規模火災について、総務省消防庁消防研究センターは2月15日に原因調査の速報を発表しました。
火災原因の火元とみられる建物では、石油ストーブなど火気器具は使用されておらず、屋内電気配線が損傷・ショートし溶けた痕跡が発見されたことから、出火原因は電気に起因した火災の可能性が高いとみられています。同センターは、詳細な原因はまだ特定されておらず、今後も奥能登消防と石川県警などと協力しながら出火原因調査を継続していくとしています。

大規模地震では電気が原因となる火災が過半数
100年前に起きた関東大震災では地震発生時刻が昼食時間帯と重なったため、炊事に使用されていたかまどや七輪などの火が出火原因の50%以上を占めました。しかし、近年は阪神・淡路大震災や東日本大震災における出火原因別報告結果にもあるとおり電気を起因とする火災が約6割を占めています。

出典: 平成27年4月消防の動き528号より

<電気に起因する火災の主な発生源>

出典: 平成27年4月消防の動き528号 より

地震火災を防ぐ主なポイント
消防庁は、令和2年版消防白書において「大規模地震発生時には、火災が同時に多くの地点で発生するおそれがあるため、消防力が不足し、住宅密集地等では大規模な火災の危険性が高くなる。(中略)また、地震に伴い、大規模かつ長時間に及ぶ停電が発生しており、停電からの復旧後の再通電時に出火する、いわゆる「通電火災」の発生が懸念される。」と警鐘を鳴らしています。
大規模地震時に懸念されている「通電火災」などの電気火災への対策として、「感震ブレーカー」の設置があります。この器具は設定値以上の揺れを感じると、ブレーカーやコンセントなどの電気を自動的に止める装置です。「感震ブレーカー」は不在時や避難時にブレーカーを落とす余裕がない場合などにおいて、電気火災を防止する有効な手段となります。

消防庁は地震火災防止のポイントを地震発生前後のフェーズ(事前対策、地震直後の行動、地震発生からしばらくして、日常対策)ごとにまとめたリーフレット(下記)を公表していますので活用ください。

 

期待される効果
住宅用火災警報器の設置や地震火災への事前対策を講じることにより、以下の効果が期待されます。

1.住宅用火災警報器設置について
●令和元年から令和3年までの3年間における失火を原因とした住宅火災について、消防庁が火災報告を基に住宅用火災警報器の設置効果を分析した結果、住宅用火災警報器が設置されている場合は設置されていない場合に比べ、死者数および損害額は半減、焼損床面積は約6割減となる効果が確認されています。

●住宅火災における経過別死者数の約4割は「逃げ遅れ」となっており、住宅用火災警報器を設置することで火災発生時の逃げ遅れなどによる死亡リスクや財産の損失を大きく減少させる効果が期待されます。

2.地震火災への備えについて
●近年の大規模地震時に発生した火災の約6割は電気に起因するとみられていることを踏まえ、内閣府は感震ブレーカーの普及により、地震火災とその犠牲者数が半数近く減少するとの試算結果を公表しています。

まとめ
今回は「地震火災」に重点をおき考えてみましたが、火災は人命も財産も奪ってしまう身近な災害です。
住宅火災で亡くなられた方は、2005年の1,220人をピークとして以降年々減少傾向でしたが、2021年と2022年には増加傾向に転じ、約1,000人の方が亡くなられています。2022年をみると、住宅火災で亡くなられた方うち約75%が65歳以上の高齢者となっています。また、住宅火災で亡くなられた理由の約半数が、病気・身体不自由による「逃げ遅れ」や熟睡していたための「逃げ遅れ」となっています。
まずは身近な防災の一つとして、地震火災に備える感震ブレーカーの設置や住宅用火災警報器の設置・点検(機器本体の取り替えは設置後10年が目安)に取り組んでみましょう。

参考文献リスト
平成27年4月消防の動き528号 「特報1 大規模地震時の電気火災の発生抑制について」
大規模地震時の電気火災の発生抑制対策の検討と推進について( 報 告 )平成27年3月
令和2年版防災白書 コラム 地震火災対策について
経済産業省 感震ブレーカー普及啓発チラシ(2019年4月更新)
政府広報オンライン 住宅火災からいのちを守る10のポイント。「逃げ遅れ」を防ぐために。

業務部 リスクマネジメント アドバイザー
宮城 和美